長野レクチュアーの後は野沢温泉まで足を延ばしました。今回選んだのは野沢温泉、麻釜(おがま)の真ん前にある住吉屋さん。何気ない宿なのにメディアで人気の旅館です。その秘密を探ろうといざ、参戦!
まず、びっくりなのはチェックインの時間が12時なこと。実際には11時半頃到着したのですが、快く部屋へ案内していただけました。このお宿はチェックアウトが11時。ほぼ24時間滞在できることになります。これは知る限り他の旅館ではありえないことです。
でもそんなに早くチェックインしてどうするの?と思われる方もいることと思います。実は野沢温泉界隈は13もの無料入浴施設があるのです。つまり村中、湯めぐりできるのです。
旅館に早くチェックインして荷物を置いて旅装を解いて浴衣で湯めぐり・・・。しかも無料。
湯めぐりと言えば関西では城崎が有名ですが、野沢温泉は無料なのです。運営は村の方々が篤志で行っています。(旅館の経営者などの協力があるので宿泊者は無料、日帰りなどの方は多少の喜捨を)
まずは湯めぐり処でもっとも人気の“大湯”へ・・・。寺社建築のような木造の建物の中へ入ると2つの浴槽が。ぬる湯とあつ湯という温度差のある浴槽ですがぬる湯でも普通の方は入れないくらい熱いのでご注意。一般的には水で埋めて入浴するようです。熱いお湯が好きな方は是非チャレンジを。
最もぬるい“熊の手洗い湯”へも行ってみましたが、それでもHOT,HOT!
住吉屋さんよりさらに坂の上にある滝の湯へ行くと何と桜が満開。京都より1か月も遅い桜に感激しました。
と、ここまで書きましたが住吉屋が人気なのはチェックインが早くて湯めぐりに便利だから・・・というのは1つの理由に過ぎません。宿の中に入るとまず目に付くのは著名な漫画家のイラスト。そう、ここは文人墨客の好んだ宿でもあるのです。そして、何気に置いてある花々や小物は本当に気が利いています。宿自体や部屋は古さを感じますし、室外の音もやや気になります。
大浴場には露天風呂もありますが、ほとんどお金持ちの家の池くらいの大きさ。(笑)
でも清潔で静謐な空間は玄人好み。1泊4~5万円、あるいはそれ以上のお宿も珍しくない昨今、そしてそういう宿がお好きだった社長がお気に入りの様子。何より空間に負けないくらい接客が気が利いています。至れり尽くせりというのではなく、丁寧で、こちらが伝えたいことをあらかじめ押さえておいてくれる・・・感じ。端々にそんな気持ちを感じましたが、1つ紹介しておくと、到着後すぐに湯めぐりについてお聞きしたところ、係の方自ら明日もチェックアウト後も車を置いたまま気軽に湯めぐりしてくださいとお申し出いただいたこと。痒いところに手が届くというか、こちらが何か言う前に気を遣っていただけること。
お料理は専用の蔵スペースでいただきました。有名な取り回し皿は2品になっていましたが、個別に食事するスタイルでは仕方ないかと。社長は岩魚の骨酒をオーダーしましたが、これも絶品だったよう。舟徳利で供されるのも一興。あとはにごり生ワインというのもオーダーしておりましたが、チェックアウトの際これも宿の心意気を示す出来事が。
翌日のチェックアウトの際、前日の生にごりワインが気に入った社長はお土産用に注文しようとすると宿のご主人はそのワインを扱っている村内の酒屋を教えてくれたのです。これはお酒の原価をお客に知られてしまうことです。当然ですが宿で出す場合、酒屋さんで売っている価格にいくらか上乗せされています。それを知られるのは(しかも翌日に)宿にとっては利益率を知られること。あまり明かしたくないのが本音でしょう。でもご主人は厭いもなく酒屋をおしえてくれるのです。
結果的にはワインに対する宿でのチャージもいたって良心的。
そのうえ、帰り際には割引券までいただきました。もともと1泊2万円以下から泊まれる宿なのです。もし割引券を利用したら安すぎます。
この内容でこの価格を維持しているのは奇跡的です。唯一、私たちにとって残念なのは遠いところ。でも遠くても行く価値はあると思います。
自遊人(雑誌)なんかでもアッパークラスのお客が好む宿と紹介されていましたが、むべなるかな。おそらく部屋付き露天風呂なんかの宿に飽きた方々は住吉屋さんのような宿に回帰しているのではないでしょうか。
野沢温泉 住吉屋さん
お奨め度 ☆☆☆☆